YOHAKU SHINKU
三軒茶屋にある、3階建ての小さな雑居ビルの最上階。
活気ある商店街に面した鉄砲階段を登った先に、ぽっかりと穿たれた、屋根裏部屋のような静けさを湛えた空間があった。
初めてその場所を訪れたとき、天井は低く、都市の喧騒から少し距離を置いた、どこか時間の止まったような「余白」を感じた。
その余白を残しながら、さらに拡張していくように計画することで、こだわりのお酒をゆっくりとたしなみ、良質な音楽に没頭し、やがて静かに会話が始まる、そんなゆったりとした時間が流れる場所を目指した。
空間の構成としては、空間の中央に長さ約7m・奥行約0.9mの巨大な銘木カウンターを据え、1席あたり2.5㎡程度の十分な余白があるゆったりとした配置とした。
カウンターと隣接したバーの顔の一つであるバックバーには、「余白の壁」を新設した。
そこに灯した蝋燭の炎が、静かにゆらぎながら、空間を紅く染め上げていく。
そのわずかな揺れに呼応するように空間の素材を選定した。
バックバーは、杉材の通常より深いうづくりの波打つ木目とした。
全体を覆う低い天井は、屋根裏部屋のような静けさを高めるために、既存の吹付による天井のもぞもぞとした質感を残し、紅く染めた。
既存の崩れかけた壁や無骨な鉄骨柱、既存のALCパネルの一部も丁寧に活かし、新材と古材はあえて分けず、既存の深紅の錆色を横断するように、空間全体を紅く一色で染め上げた。
過去と現在がゆるやかに混ざり合う空気を纏わせ 、「やわらかな揺らぎ」を空間全体に点在させた。 都市の中の余白としてのミュージックバーが、都市の片隅で灯火のように、静かに誰かのかけがえのない場所となることを願っている。















クライアント:bar cōmori
場所:東京都
用途:バー(内装改修)
施工:株式会社エス・ツー
Photo:yasuhiro takagi